10代女性アスリートの「無月経」を見逃さないで
Tweet11月にアメリアのフィギュアスケート選手であるグレイシー・ゴールドが2018年に開催される平昌五輪出場を断念したことが発表されました。理由はいくつかあるようですが、アスリートとして、常に体重についての悩みを持っていたと発言しています。フィギュアスケートに限らず、アスリートは競技の成績向上のために意図的に体重を落とすことがあるようです。また、カロリー摂取量と運動量のバランスから意図せずとも体重が減ってしまうこともあります。こうした、女性アスリートの極端な減量は、健康を損なうばかりか、女性としての将来に影響を及ぼすことがあります。特に思春期にある10代の女性アスリートは注意が必要です。
女性アスリートにおきやすい「無月経」
女性アスリートによく起こるのが、運動を原因として月経が3ヶ月以上止まる「運動性無月経」です。精神的なストレスの影響も考えられますが、“エネルギー量不足”による体重や体脂肪の減少が月経停止に大きく影響します。国立スポーツ科学センターが2014年、国内のトップレベルの女性アスリート683名に行った調査によると、無月経を含む月経の周期異常があるアスリートは約40%にも上り、体操、新体操、フィギュアスケート、長距離走などの審美系や持久系競技種目において無月経であるアスリートが多いことが分かっています。
「競技別にみた無月経の割合」出典:国立スポーツ科学センター無月経が続くと骨の成長に関わるエストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下し、骨量が減少する「骨粗鬆症」となることがあります。骨量が減少すると疲労骨折のリスクが高まります。10代の女性アスリートは疲労骨折の発症率が高く、特に無月経であるアスリートの発症率がより高いことが分かっています。これは、骨密度の年間増加率がもっとも高い11~14歳頃に、骨形成に必要なカルシウムの摂取や、順調な月経にともなう正常なエストロゲンの分泌などが妨げられるためです。正常な月経を維持することは10代の女性アスリートが骨量と骨密度を得るために必要なものです。
10代の女性アスリートに必要な栄養素
10代の女性アスリートの食事は三食を欠かさずに、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂るよう心がけましょう。摂取カロリーの目安は、競技種目にもよりますが2350~2700kcalです。
具体的には…
・主食:ごはん、パン、うどん、パスタ などに含まれる糖質は、運動中のエネルギー源となる
・主菜:筋肉や骨、血液などを作る、肉、魚、卵、豆腐 などタンパク質を多く含む
・副菜:野菜、キノコ、いも、海藻、豆類など、体調を整えるビタミンやミネラル、食物繊維を含む
・牛乳、乳製品:カルシウムが多く含まれ、骨の成長を促す
・果物:ビタミンCが抗ストレス効果や鉄分の吸収促進などを促す
また、10代のアスリートではトレーニングや部活動後から夕食までに時間が空く場合に、「補食」を取り入れることも大切です。補食の取り方は、夕食の時間が20~21時頃までの場合には、おにぎり1個と100%の柑橘系のジュース1本を摂り、夕食はしっかりと食べます。夕食が21~23時頃になる場合は、おにぎり2個と100%柑橘系ジュース1本を摂り、夕食は主菜、副菜、果物、牛乳、乳製品を食べます。このように、エネルギー摂取量が、運動によるエネルギー量を下回らないように注意します。
10代の女性アスリートに対するサポート
指導者や保護者は、著しく体重が減っている選手や毎月一定期間パフォーマンスが落ちる選手がいる場合は、月経にまつわる問題を抱えている可能性を考えてみましょう。気になることがあれば専門家に栄養指導を受ける、婦人科の医師へ相談してピルの処方を受けるなどの機会をつくり10代の成長期にある女性アスリートの体を守るサポートをしましょう。