健康を脅かす「睡眠負債」を解消する、質の高い睡眠とは
Tweet毎日、誰もが眠ります。では、その毎日の睡眠は本当に快適なものでしょうか? 最近では「睡眠負債」という言葉が注目されており、睡眠不足が蓄積されると、健康を脅かすことが分かってきています。あなたは負債を貯めずに、健康的な睡眠をとることができていますか?
「睡眠負債」の健康リスク
「睡眠負債」とは、睡眠研究の第一人者で「スタンフォード式 最高の睡眠」(サンマーク出版) の著者としても話題の西野精治氏らが提唱してきたものです。日本は世界的に見ても睡眠不足の人が多く、日本人の約4割の睡眠時間は6時間未満ともいわれています。最適な睡眠時間は7~8時間といわれており、この足りていない睡眠時間が負債として蓄積していきます。その結果、集中力の低下や、ホルモンバランスの乱れによる体重増加や肌荒れ、免疫機能の低下やうつ、更にひどくなるとがんや糖尿病、認知症のリスクが増加する可能性も。
「黄金の90分」を手に入れる質の高い睡眠とは
今回は、株式会社エアウィーヴの快眠プロデューサー長谷川恵美さんに、眠りについてお話を伺いました。長谷川 睡眠は、私たちが心身ともに健康に生きていくために、思っている以上に重要なものです。残念ながら、日本は欧米に比べると睡眠に対する意識がまだまだ低いと思います。まず、睡眠時間についてですが、大人の方でも出来れば7時間は確保していただきたいと思っています。忙しい毎日の中で時間の確保が難しいということであれば、睡眠の質を上げていくことが重要です。その一つに西野先生が提唱された「黄金の90分」があります。これは入眠後の90分の質を高めて深く眠ることで、たとえ睡眠時間が短くても、体調が整い、翌日のパフォーマンスも向上するというものです。
―「黄金の90分」を手に入れるためにはどのような準備をするとよいのでしょうか?
長谷川 いろいろありますが、一つには家の照明を見直すことです。日本の都市部の夜は明るく、室内もとても明るいので脳が覚醒してしまいます。リラックスモードに入るために眠る2~3時間前には間接照明にしたり、照明そのものを白いものから暖色系のものへ替えることもおすすめです。もちろん眠る前にスマートフォンを見ることもブルーライトの影響から避けてほしいことです。また、日ごろから規則正しい生活を心がけて体内時計を整えること、適度な運動をすること、眠る2~3時間前には食事を終えておくことも挙げられます。食事でいえばタンパク質をきちんととることで、睡眠を促すホルモンをつくることに繋がります。もう一つ、大切なポイントは眠りに入るときに「深部体温」を下げることです。人は眠るときに手足の表面温度が高くなって熱を放出し、深部の体温が下がります。入浴でこの効果を得るために、眠る1時間半くらい前に38度から40度くらいのぬるめのお風呂に入って、少し体温を上げます。上がった体温は元に戻ろうと、必ず下がるので、この時に布団にはいると気持ちよく眠ることができるのです。
―寝具と睡眠の関係はどのようなものなのでしょうか?
長谷川 マットレスは適度に硬くて、反発力のあるものがおすすめです。体重を押し返してくれるので寝返りが楽に打てるからです。私たちは、大体一晩の間に20~30回ほど、寝返りを打ちます。寝返りで毎回自分の筋肉を使うのと、ほとんど筋肉を使わずに楽に寝返りが打てるのとでは、疲れの取れ方が全く違います。また、寝返りの度に筋肉を使いすぎると、せっかく深い睡眠に入っていても、その度に覚醒しがちになってしまいます。掛布団は吸湿性のいいものがおすすめです。冬でもコップ一杯分くらいの汗を一晩でかきますので、汗が布団の中で蒸れてしまうと深部体温が下がり切れなくなってしまいます。睡眠に関する研究の歴史はまだ浅いのですが、睡眠不足が経済に与える影響は大きく3.5兆円にも上るという報告もあります。睡眠の大切さが認知され、皆さんに健康で快適な生活を過ごしていただければと思っています。
私たちも見直したい睡眠環境
2018年の平昌、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも株式会社エアウィーヴの寝具で選手をサポートしているそうです。パフォーマンスを重視するアスリートであれば、睡眠の質のこだわるのは当たり前といえるかもしれません。しかし、アスリートに限らず私たちも睡眠環境を見直して、質の高い睡眠を手に入れることで、日々のパフォーマンスを向上させ、健康を維持することが可能となりそうです。
取材協力 株式会社エアウィーヴ