望まない妊娠と自分の体を守るための「アフターピル」の基礎知識
Tweet望まない妊娠を避けるための手段のひとつである「アフターピル」。緊急を要する一方で、産科婦人科やクリニックなどで処方箋をもらわなくては手に入らないため、入手までのハードルが高い点がネックだという声もあります。
そんななか、オンライン診療でアフターピルを処方する医療機関が登場しはじめました。一方で医療者ではない個人による通信販売サイトも存在し、注意が必要です。
アフターピルって?市販や通販はされている?
アフターピルは、女性が性交後に服用することで妊娠を回避できる薬のこと。モーニングアフターピルとも呼ばれています。避妊に失敗した場合や、性的な暴力被害に遭った際などに利用できる緊急手段として、日本では2011年に承認されました。性交後72時間以内に服用すると避妊に効果があるとされており、アフターピルの種類によっては、さらに12時間後2回目の服用が必要な場合があります。
欧米では市販薬として薬局などで手に入る一方、日本では「薬局で薬剤師による説明が難しい」「安易な使用が広がる」ことなどが懸念され、アフターピルの市販化はいまだ認められていません。こうした背景から、日本で流通されていない海外製アフターピルを個人輸入するなどし、通信販売をしているサイトもあるようです。
しかし、医療者で無い販売元の信用を確認することは難しく、偽造品が含まれている可能性もあります。有効成分が入っていない場合は避妊効果がなく、ひどい場合は、体に有害な成分が含まれている危険性もあります。通信販売で入手した場合は、購入から服用まですべて自己責任なので、信頼できない販売元によるアフターピルの利用はおすすめできません。
アフターピルを処方してもらうには
アフターピルの存在や使用方法について、特に知っておいてほしい若い世代での認知度が低いという現状もあります。また、入手方法についても「近くに産科婦人科が少ない」「仕事や学校を休めない」「知人と顔を合わせたくない」といった理由から、ハードルを高く感じる方もいるようです。
現在では、オンライン処方という選択肢も加わりつつありますが、やはり基本は医師と対面し、詳細にわたる説明を受けたうえで服用することを推奨します。予約不要、内診や血液検査なしで即日処方が可能な医療機関がほとんどで、年齢制限はありません。費用は医療機関によって異なりますが、一般的に2万円前後の場合が多いようです。もしかして…ということがあった場合は、不安を抱えたままにせず、すぐに産科婦人科、クリニックを受診しましょう。
望まない妊娠を防ぐために、女性がいまできること
厚生労働省が発表した「平成29年度衛生行政報告例の概況」によれば、人工妊娠中絶の件数は16万4,621件。実に一日当たり450件を超えています。さらに、20歳未満が1万4千件強という現状に加えて、20代の件数が7万件を超えている点も、女性の妊娠・出産や性に関する課題を浮き彫りにしています。この背景には、性教育の遅れを発端とした、まだまだ性に関する情報がオープンではない日本の風潮がありそうです。
望まない妊娠は、女性の体と心を深く傷つけ、場合によっては将来的な不妊の原因にもなりかねません。緊急時の対応策として、アフターピルの存在を知っておくことはもちろんですが、まずは普段から自分の体のケアを心がけておくことが必要です。また、避妊に関しても、受け身ではなく自分の体は自分で守るという意識を持ちましょう。そのために、低用量ピルや子宮避妊具の使用を検討することも、ひとつの方法です。
ただし、これらの方法では性感染症は防げませんので、性交渉を持つ際にはコンドームの使用が必須です。年齢を問わず、性に関する正しい知識を持つこと、そして日頃から自分の体について知っておくことが大切です。そのためには、不調を感じたら気軽になんでも相談できる産科婦人科のかかりつけ医をもちましょう。このことが、女性の人生がより健康的に輝くための大きな役割を果たすのではないでしょうか。