中学生や高校生が「もしかしたら妊娠しているかも」と不安になった時にできること
Tweet新型コロナウイルスの影響で休校や外出自粛が相次ぎました。この期間を経て、中高生など10代の女性たちの妊娠相談が増加しているそうです。「もしかしたら“自分が”“恋人が”“友達が”妊娠しているかもしれない」、という不安を抱えたときに知っておいてほしことがあります。
妊娠の仕組み
妊娠とは卵子と精子が受精後に着床し子宮の中で成長することです。自然妊娠では、膣内に入ったペニスから射精された精子が、卵巣から排卵された成熟した卵子と受精し、受精卵となります。この受精卵が女性の子宮内膜に着床し、10日ほどすると妊娠が確認できます。出産までは約260日です。
Point
●膣外射精(コンドームを付けずにペニスを膣内に挿入し、射精の直前に膣からペニスを抜く方法)では避妊をすることが難しく、妊娠のリスクが高まります。
●排卵のタイミングを把握することは難しいため、安全日や月経中の性交渉でも妊娠することがあります
●オーラルセックスによる口内への射精では妊娠はしません。ただし、性感染症のリスクは高まるため、注意が必要です。
●ペニスの挿入を伴わない男女の触れ合いで妊娠することはありません。
予期せぬ妊娠をしないために
若い世代の女性が予期せぬ妊娠をしないためには、低用量ピルの服用、コンドームの正しい使用、モーニングアフターピルの服用があります。低用量ピルは産婦人科で処方してもらうことができます。月経不調や月経困難症の改善、試験や部活動などの試合の際に月経を移動できるなど避妊以外のメリットもあります(使ってみたいけど副作用が怖い!「ピル」にまつわるウソホント)。
コンドームを使用する際は袋から出して裏表を確認し、破けないように注意してペニスの根元までしっかりと降ろします。膣へ挿入する最初から着用し、射精後はコンドームの根元を抑えて速やかにペニスを抜きます。
また、コンドームが膣内で外れたり、破れてしまったなど、性交直後にすでに妊娠の不安がある場合には、モーニングアフターピル(アフターピル(緊急避妊薬)とは? 服用方法や効果、副作用は?)を72時間以内に服用することで、妊娠を避けることができます。
さらに、初経以降は自分の月経周期や体について日ごろから意識しておくことが大切です。月経不順をそのままにしておくことで妊娠に気が付かない場合もあります。妊娠中にはさまざまな体調の変化が起こるため、体のサインを見過ごさずにしっかりと受け止めましょう。性交渉の経験があり、予定日から一週間を過ぎても月経が来ない場合は妊娠の可能性があることを理解しておきましょう。
妊娠の不安を抱えたら今すぐできること
「月経が遅れている」「避妊に失敗した可能性がある」と思った場合には、ドラッグストアなどで購入できる市販の妊娠検査薬で調べることができます。月経予定日の1週間後から検査することができます。妊娠の可能性や自分の体について不安がある場合はすぐに信頼できる人に相談しましょう。家族に相談したり、最初から産婦人科を受診する方法もあります。しかし、若い世代の女性にはそうした対応が難しいと感じる方が多いのも事実です。その場合には、迷わず支援先に相談してみましょう。不安を一人で抱え続けることはありません。
支援先
●ユースクリニック若い世代の女性が無料もしくはワンコインなどで妊娠や性に関する相談ができるところです。初めから産婦人科に行くことが難しいと感じる場合には、ユースクリニックに相談してみましょう。
●NPO予期せぬ妊娠をした場合に相談先となってくれるNPOがあります。各団体ともに基本的に相談は全国対応となっています。
●自治体自治体でも若い世代の女性の妊娠について、相談窓口を設けていることころがあります。自治体のHPで確認することができます。
全国のにんしんSOS相談窓口
上記リンクより、NPO、自治体の窓口を確認することができます。いずれの支援先も基本的には電話やメールで問い合わせることができ、内容についての秘密は厳守されますので、ためらわずに相談を進めましょう。
妊娠がわかってから選択できること
妊娠していることが分かった場合にはいくつかの選択肢があります。
出産して自分で育てる
赤ちゃんを出産して育てる場合には、パートナーや家族と金銭や居住などをどのように確保し、将来的にどのように子供を養育していくのかについて、十分に話し合う必要があります。また、学校を退学するなど、学業の中断を選択しなければならない場合も多くあることも事実です。産後の母親のキャリア形成や将来の働き方についても十分な検討が必要です。しかし、文部科学省によれば生徒に学業継続の意思がある場合は「安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処は行わない」という通知がでています。関係者でよく話し合い判断を行いましょう。若年出産では母体の発育が十分ではないため、つわりが長引く、流産や早産、赤ちゃんの成長が遅く育ちにくい、自然分娩が難しく帝王切開となりやすいなどのリスクが伴うことも理解しておきましょう。
人工妊娠中絶を行う
妊娠22週未満であれば、中絶を選択することができます。人工妊娠中絶は母体保護法に基づき、母体の健康上の理由により妊娠の継続、分娩が困難である場合、経済上の理由がある場合、および性暴力による妊娠である場合に受けることができます。処置を受けるためには、必ずパートナーの同意が必要であり、母親が未成年の場合は保護者の同意も必要となります。
12週までの手術には子宮内をかきだす掻把法と機械で吸い出す吸引法があります。いずれも子宮口を拡張し麻酔をして行うもので、通常は10~15分で処置は完了します。体調に問題がなければ当日に帰宅することができます。12週以降になると子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させる方法となります。数日間の入院が必要となり、体への負担も大きいものです。
人工妊娠中絶は妊娠期間が長引くほど、母体への負担も大きくなるためできるだけ早い時期に行うことが望ましいとされています。施設によって費用は異なりますが、費用だけで判断するのではなく、必ず安全面を確認し信頼のおける施設を選択するよう心掛けてください。
中絶は女性にとって体の負担になるだけでなく、心にも大きな負担が伴います。中絶後の心についても、我慢せずに信頼できる人や支援先に相談しましょう。中絶を選択した女性が複雑な感情を抱くのは当たり前のことです。将来、時期が来て赤ちゃんを産むことがあるかもしれません。その可能性も含めて、傷ついた心と体を癒す期間をしっかりと設け、未来に向けて自分自身の体をどのように守っていくのか考えてみましょう。
特別養子縁組、乳児院、里親制度を利用する
赤ちゃんを産み育む方法としては、育ての親と養子縁組をする特別養子縁組、実親が育てられるようになるまで預かってもらう乳児院や里親制度があります。自分で育てることが難しかったとしても赤ちゃんが命をつなぎ元気に育っていくことができます。
予期しない妊娠は誰にでも起こりうるものです。どれほど気を付けていたとしても、100%の避妊はあり得ません。もし妊娠の不安を抱えているとしたら、できるだけ早く、信頼できる人に相談してください。あなたは決して一人ではありません。必ず、一番いい選択肢をあなた自身で選ぶことができるはずです。また、予期せぬ妊娠の中には性暴力によるものも含まれます。性暴力はどのような状況にあったとしても許されるものではなく、被害にあった女性が責められるものではありません。こうした状況の中で妊娠の不安を感じている場合もすぐに対応を進めてください。
「リプロダクティブ・ヘルス・ライツ」という言葉があります、これは「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。すべての人は自分自身の体や心を大切にする権利があり、子供を持つか持たないかについても、自分自身が選択する自由があるということを示しています。あなたの体も心もそのどちらもが、あなた自身のものです。妊娠や出産の意思決定はあなた自身が行うことができるものなのです。そのことを忘れずに、どうぞ勇気をだして、あなたの未来へ歩みだしてください。