厚生労働省が子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種対象者に対する積極的勧奨を中止してから、もうすぐ丸8年が経とうとしています。日本では、この間も子宮頸がんの罹患者数、死亡者数は増加傾向にあり、1年間に約1万人が罹患し、約2,800人が亡くなっています。特に、20~30代のAYA(Adolescent & Young Adult)世代と呼ばれる、若年層の女性の罹患率が高まっていることも看過できません。
一方で、これまでの2価、4価ワクチンより多くの種類のヒトパピローマウイルス(HPV)を予防できる9価ワクチン(シルガード®9)の使用が国内で承認されました。子宮頸がんは予防できるがんです。そのためにはどのようにワクチンを接種するとよいのでしょうか?
2価、4価ワクチンと9価ワクチンの違い
これまで国内で接種されていたのは、「サーバリックス(2価)」と「ガーダシル(4価)」の2種類のワクチンです。HPVには100種類を超える型がありますが、がんの原因となるハイリスク型はこのうちの13種類であるとされています。9価ワクチンのシルガード®9はこの13種類のうち、子宮頸がんの原因となる16,18,31,33,45,52,58型と尖圭コンジローマの原因となる6,11型に対する抗体をつくることができるワクチンです。これは、日本人の子宮頸がんの原因となるHPV型の約8割のカバーするものです。これまでに、2価、4価のワクチンを接種している場合でも、9価ワクチンを再接種することも可能です。しかし、いずれのワクチンも途中変更をすることはできません。現状では2価、4価ワクチンは小学校6年生~高校1年生までは公費で接種することができますが、9価ワクチンの接種は1回3万円程度で自費となります。接種を希望する場合はかかりつけの産婦人科、小児科、内科などの医療機関に問い合わせましょう。
シルガード®9の接種回数と方法
9価ワクチンの接種方法は他のHPVワクチンと同様に、腕への筋肉注射で、3回の接種が必要です。接種対象は9歳以上の女性です。日本では男性の接種は認められていないため、男性が接種を希望する場合は2価、4価ワクチンの接種となります。9価ワクチンの接種期間は1回目の接種から2ヶ月後に2回目、6ヶ月後に3回目となっています。また、ワクチンの接種には「
ワクチンQダイアリー」への登録が義務付けられています。スマートフォンやタブレットに専用アプリをダウンロードし、履歴を記録します。接種内容に関して医師とコミュニケーションを図るツールであり、接種スケジュールの管理も行われます。さらに、この「ワクチンQダイアリー」に登録することによって、副反応についての情報を収集分析する目的もあります。
接種後の副反応に関する注意事項
ワクチンを接種後は30分ほど医療機関内で安静にし、様子を見ます。ワクチンの接種ではHPVワクチンに限らず、接種部位が腫れたり、痛むこともありますが、これは、体の正常な反応のひとつです。多くの場合では数日程度で収まります。また、既存のHPVワクチン接種の副反応については、日本産婦人科学会の公式見解として「
HPV ワク チン接種後に生じた多様な症状と HPV ワクチンとの因果関係を示唆する新しい質の高いエビデンスは報告されていない」とされています。ただし、アナフィラキシー等の過剰反応が現れた場合は、すぐに医療機関に相談してください。
大切なのはワクチンの接種と定期的な検診
子宮頸がんの原因となるHPVは主に性交渉によって感染します。HPVはありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性の8割が感染を経験し、多くの場合は自然排除されます。このように、誰にでも感染の可能性があるウイルスだからこそ、ワクチン接種と定期的な検診が重要です。ワクチンを接種しても20歳を過ぎたら2年に一度の検診を必ず受けましょう。子宮頸がんは予防できるがんであり、もし罹患しても早期発見ができれば、命に関わることはありません。また、将来の妊娠出産も可能です。
2020年から、公費による接種対象者に通知が届くようになりました。公費での接種可能期間は高校1年生までとなっているため注意しましょう。また、
海外の研究では、接種の推奨年齢を過ぎた世代でのキャッチアップ接種でも高い予防効果が認められています。公費の接種年齢を過ぎている場合でも、接種は有効です。
キャッチアップ接種を希望する女性たちの声が上がってきていることもHPVワクチンに対する重要性が女性たちに浸透していることがわかります。
公費、自費に関わらず、HPVワクチンは接種可能年齢に達したら、できるだけ早い時期に接種することで高い効果が望めます。子宮頸がんに対して、正しい知識を持ち、守ることのできる健康と命を大切にしましょう。