ミキハウスが目指す「ママ・パパが安心して子育てできる社会」
Tweetこれから赤ちゃんを迎えるプレママ、プレパパに向けて、少しでも不安を和らげ、新しい生活を安心してスタートできるようにミキハウスが全国各地で開催している「プレママ・プレパパセミナー」。今回は、このセミナーを担当されている西久保江里さんにお話を伺いました。
プレパパも積極的に参加! 「ミキハウス プレママ・プレパパセミナー」
― 本日はよろしくお願いします。まず、「ミキハウス プレママ・プレパパセミナー」についてお話をおきかせください。
西久保 私はプレママ、プレパパ、ご家族の方に向けて、安心して出産・子育てを迎えていただくための体験セミナーの企画とその開催をメインで担当しています。具体的には、生まれたての赤ちゃんについてのお話、何を揃えたらいいのか悩まれる方も多い肌着やおむつ、お洋服のお話。また、水は実際に使わないのですが、沐浴の手順についてもお話します。そのあと、新生児と同じ身長・体重の赤ちゃん人形を使って肌着の着せ方やおむつのつけ方、沐浴を体験していただきます。こうした内容を約2時間、東京や大阪をはじめ全国の様々な会場で行っています。
― 西久保さんは何年くらいこのセミナーをなさっているのですか?
西久保 こういう大きなセミナーをメインでやり始めたのは約3年前からです。実は私は、8年程前は、新生児ブランドのマーケティングディレクターだったんです。自分自身の子育てのことを振り返った時にこういったセミナーがしたいと思い、店舗で4~5組くらいのお客様をお呼びしてセミナーを実施したのが始まりです。回数を重ねていくうちに、お客様からのお声も多くなり、大きな会場を借りて定期的に開催するようになりました。
― お客様からのニーズがあったのですね
西久保 そうですね。行政や病院などでもセミナーをされていらっしゃいますが、平日の昼間に開催されていたり、受けたいと思っても参加枠が狭くて受けられない、などニーズに対して供給が足りていない部分があるようです。また、こういったことを知りたいけれど、聞く場所がない。ネットや本などで情報を得ることもできますが、実際に体験をできる場はなかなかないといお声をたくさんいただいたので、お仕事帰りのマタニティさんも参加できる18時半からの夜の部や、土日の開催も実施しています。
このセミナーでは、人形の赤ちゃんを1人1体ご用意させていただいています。ペアでセミナーを受けると、ペアに1体やテーブルに1体ということが多いのですが、私たちは来られた方全員に1体ずつ赤ちゃんをご用意して、肌着なども全部用意して、きちんと1人ずつ体験ができるようにしています。
― 8年間の中で参加される方の変化を感じていらっしゃいますか?
西久保 全国で開催していますが、大阪や東京ではパパ・ママの参加率が高く、地方になるとママとおばあちゃん、おじいちゃんという方が多いですね。中にはおじいちゃんおばあちゃん、パパ・ママとご家族で来られる方もいらっしゃいます。ママ+パパとイメージされるかもしれませんが、ここ最近ではパパ1人という方も多いんですよ。
― それはすごいですね!
西久保 もちろん最初はママと一緒に申し込みをされているのですが、ママが少し具合が悪くて、という時でもパパ1人でも参加されて、すごく一生懸命に聞いてくださるんです。8年前は、
「妻に連れて来られて」という方が多かったのですが、ここ2,3年はパパが聞く気満々。
15分の休憩時間の間も抱っこ紐の付け方を、パパが試されたり、すごく積極的に参加されてますね。
自分の出産経験で会社を変える 覚悟を決めた産休育休
― 西久保さんご自身についてもお話をお聞かせください。お子さんはいらっしゃいますか?
西久保 中2の息子と小5の娘がおります。主人が比較的時間のきっちりとした仕事で、帰りが早いんです。家族の協力のおかげで、仕事をつづけることができています。
セミナーを始めたのはまだ長男が小さい頃です。長男を出産する前は店舗で販売業務をしていました。育休明けに内勤になって、新生児ブランドの担当になりました。当時のミキハウスでは、ベビー用品を扱ってはいましたが、どちらかというとギフト用として購入される方が多かったんです。正直なところスタッフもそれほど知識がありませんでした。その時に会社全体が赤ちゃんを迎えるマタニティの時期から、産後2歳くらいまでの赤ちゃんの生活全般(以下ベビー)に力をいれようということになったのです。復帰した時点でまずは販売スタッフに対してベビーの勉強をしよう! と研修を始めたんです。自分の息子もちょうど1歳で、自分で書いた育児日記を参考に経験談を話しながら「ベビー」の土台作りを行いました。
― 10年程前はミキハウスで産休育休を取る方はいらっしゃいましたか?
西久保 当時は産休育休を取る人より、結婚や妊娠出産での退社の人が多かったと思います。ですから、私が産休育休を取りたいと話した時は、非常に驚かれたことを覚えています。でも、もともと子どもに関わるミキハウスの仕事が大好きだったので、「せっかくの出産・育児という自分自身の経験を今後にもしっかりとつなげていきたい」という話をしました。そうやって言い切ったので、自分なりに覚悟を決めたところもあると思います。そして何よりも周りの協力が本当にありがたかったです。子どもが小さい頃はすぐに熱を出したりするので、迷惑かけて申し訳ないと思っていたら、一緒に働いていたメンバーが、一言目には必ず「家族優先ですから」と言ってくれて。かわりに、子どもが元気になったときや主人が休めるときには精一杯働こうとか、穴を開けた分はここでちゃんと埋めるようにしよう、と考えられるようになりました。
― 現在はいかがですか?
西久保 今は会社の中でも産休育休の取得者が増えてきました。私は周りの方に助けられて今も楽しくお仕事を続けられているので、「ああいう風に産休育休を取れたらいいな」と結婚しても仕事を続ける後輩も増えてきました。そして今は産休育休の取得者も増えてきています。時短勤務の制度も整い、ますます女性が仕事を続けやすくなっていると思います。
― 西久保さんご自身は、お子さんは望まれたタイミングでしたか?
西久保 そうですね、28歳で結婚して、30、33歳で産んでいるのでタイミングはすごくよかったです。
― お仕事されながら、お2人目をご出産されることについてはいかがでしたか?
西久保 私は、家族の協力と一緒に働くメンバーに恵まれたんだと思います。出産すると、少なくとも何ヶ月かはお休みを取るので、自分が抜ける間に任せておけるメンバーがいないと無理ですし。1人目の時は丸1年休んだんですけど、2人目の時は8ヶ月で復帰しました。その時はベビーブランドの担当をしており、展示会という大きなイベントに合わせて戻りました。その展示会で新しい商品のご提案をするという大きな仕事もあり、私自身の復帰のモチベーションになりましたね。
― 体調はいかがでしたか?
西久保 特に問題ありませんでした。私はずっと家にいるよりも、外で活動する方が好きなので、主人もそれを理解してくれていると思います。主人によく言われるのが、「仕事の愚痴を言うんだったらやめたらいい」と。確かに、これだけ協力してもらっていて、「自分が好きだからやってる」ならいいけれど、無理してやる必要はないなと。
― 就職を決めるとき、将来出産しても仕事を続けようと思っていらっしゃいましたか?
西久保 子ども服の会社なので、できればそうなるといいなとは思っていました。でもまさかこんなにベビーにたずさわらせてもらえることになるとは思っていませんでした。私の場合は、入社して2年目、店頭で販売業務をしているとき、ベビーブランドの商品追加や商品管理・ディスプレイなどを担当することになりました。赤ちゃんの成長に合わせてコーディネイトを考えたり、販売することがすごく好きだったので、本社のベビーブランド担当者に商品のことや販売ツールなどお客さまとお話する中で日々感じたことなど、いろいろ提案していました。その後、結婚、妊娠、出産と過ごすそのタイミングで会社がベビーに力を入れ始めたんです。ちょうど育児休暇から復帰した私に対して、会社は自分自身の知識と経験を生かして「ベビーブランド担当になりベビーを広めていって欲しい」と辞令をいただきました。そのブランド担当を約8年務めたことが今の原点だと思います。3年後に2人目を出産しましたが、1人目の時とは子育てが変わっている。自分自身で変化していくところも経験しながら、仕事として近いところで関わらせていただいてます。
女性が「どういう生き方をしたいか」を考えた働き方
― これからキャリアを築きながら子育てもされる女性に対しアドバイスはありますか?
西久保 以前、男性の営業と一緒に、店舗スタッフのフォローをする立場だったことがあり、その時に女性スタッフから将来のことでよく相談を受けていました。そこで伝えていたのは「権利と義務は背中合わせだよ」ということです。産休育休は取れなくてはいけませんが、その権利だけを主張してその権利に見合う働きや貢献がなければ、自分と会社がお互いにwin winにならないわけです。なので、あえてアドバイスをするとすれば、「自分がどういう生き方をしたいか」という大きいところを見ることだと思います。結婚も出産もゴールではなく女性が生きていく中での通過点、結婚や出産した自分が将来どうありたいかと具体的なイメージを持っていた方が自分も周囲も考えやすいのではないでしょうか。会社としてもこの人が一年後に復帰するなら、こういうポジションを用意しておこう、こんなふうに活躍してもらおうと思えますよね。妊娠・出産・子育てをキャリア形成と背反するものとはとらえずに、同じ1人の人間として、成長の機会と考えた方が、仕事でもプライベートでも可能性が広がるのではないでしょうか。
― 最後に今後、西久保さんが目指されていることがあればお聞かせください。
西久保 私は幸いに、新しい家族を迎えることでママになり、パパになり、おじいちゃん、おばあちゃんになられる幸せオーラいっぱいの方と日本中でお会いしてお話をさせていただいています。中には出産や育児に不安を抱えておられる方もいらっしゃいますが、それ以上に楽しいことがたくさんあるので、それを共有して、少しでも安心して子育てを楽しみにしていただければと思っています。
また私ひとりでできることではありませんが、子どもをみんなで育てていける社会にしていけたらいいなと思っています。子どもはママやパパだけが育てるのではなく、周りの人たちも巻き込み、協力してもらうことで子ども自身がより豊かに育っていくのではないかと、私自身の子育ての経験を踏まえて思っています。これからのママたちが安心して子育てができ、仕事にやりがいを感じ、充実した生き方ができるようになればいいなというのが私の願いです。
西久保 江里(にしくぼ えり)
1973年生まれ。ミキハウス 三起商行株式会社 営業企画部 コンテンツ事業 セミナー担当 ミキハウス子育てキャリアアドバイザー
ミキハウスショップでファッションアドバイザー、店長を勤め、その販売経験をいかし、ミキハウスベビーブランドのMDとなり、ベビーのものづくり・商品展開に携わる。その後、百貨店のエリアマネージャーとして関西エリア含む26店舗を担当。2017年春から営業企画部のプレママ・プレパパセミナー専任担当となり、セミナー講師はもちろんのこと、全体のスケジュール管理や内容の検討、参加されたお客さまのフォローなども行う。2児の母でもあり、自身の子育て経験をふまえ、全国のプレママ・プレパパセミナーの講師を年間80回以上つとめる。