30代以下の女性に必要なのは「月に一度の“乳がん”セルフチェック
Tweetみなさんは、乳がん検診を受けていますか? 著名な方々が乳がんであることを公表されたり、残念ながら亡くなられたというニュースを耳にすると、「私も病院で検診を受けたほうがいいのかな?」と思うかもしれません。もちろん、病院での検診受診は大切なことですが、乳がんの場合、30代以下の若い世代の女性に大切なのは、まず「月に一度のセルフチェック」です。
乳がんの罹患率が最も高いのは40~50代
乳がんの罹患率が高いのは40~50代の女性です。リスクとしては初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産経験が無い、初産年齢が遅い、授乳経験が無い、などが上げられています。厚生労働省のガイドラインでは40代以降の女性に対して2年に1度の検診受診を推奨していますが、日本では乳がんの検診受診率が諸外国にくらべて低い傾向にあります。日本の乳がん罹患者は増加傾向にあり、死亡者数も増加しています。このうち、35歳以下の乳がんは全体の約3%と言われています。
「年齢階級別がん患者率推移(1965年、1990年、2013年)」公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計‘14」
若い世代にあまり有効でない乳がん検診
では、若い世代の女性たちに乳がん検診は必要ないのでしょうか? 乳がん検診の主な方法は「マンモグラフィー検査」と「超音波検査」です。マンモグラフィー検査は、乳房専用のレントゲンでがんを検出するものですが、若い世代は乳腺濃度が高く、マンモグラフィーで確認をしても乳腺の異常がわかりにくいため、40代未満に対する検査の有効性が認められていません。乳がん検診のもう一つの方法である超音波検査は、乳腺濃度の影響を受けるものではありません。マンモグラフィー検査と併用することでがんの発見率が上がるといわれていますが、現段階では超音波検査が乳がんの死亡率を下げる根拠は確認されていません。こうした理由から、若い世代の乳がん検診は有効とはいえないのです。
なお、若い世代に限らず、そもそも日本人女性には乳腺濃度の高い“高濃度乳腺”が多くみられます。高濃度乳腺はマンモグラフィーでの検出を妨げるとともに、まだはっきりとした関連性はわかってはいませんが、乳がんに対する中等度のリスク因子とされています。しかし、乳腺濃度は年齢が上がると低下すること、40代までの出産・授乳経験により乳腺濃度が低下する傾向にあることが分かっています。
「月に一度のセルフチェック習慣」を身につける
若い世代の乳がんは非常に低い割合ですが、ゼロではないため注意は必要です。そのため、30代以下の女性におすすめしたいのは「月に一度のセルフチェック」です。自分の乳房を自分の指で定期的に確認しておくことで、変化に気がつきやすくなります。もちろん、この検査は30代以上の女性にも習慣にして欲しいものです。
【自己検診の方法】
生理前から生理中は乳房が張っていてわかりにくいため、検診は毎月生理が終わって1週間~10日頃に行います。閉経後の方は、毎月日にちを決めて行います。
①鏡の前で乳房にくぼみやひきつれがないか、乳頭から血液などが出ていないかをチェックします。手を上げた状態と、下げた状態の両方で確認します。
②仰向けになって、右手を頭の下に置きます。左の人差し指、中指、薬指の腹で、乳頭からわきの下まで、あばら骨に触れる感覚でしっかりとまんべんなく触ります。左の胸も同じ要領で触ります。
小豆や小石のような硬さのもので、動かないしこりがある、乳頭から分泌物がでるなど、自己検診で異変に気づいたら、すぐに「乳腺科」もしくは「乳腺外科」を受診しましょう。受診先は婦人科ではありません。
<参考>
公益財団法人 日本対がん協会「もっと知りたい乳がん -あなたを守る検診のすすめ-」
https://www.jcancer.jp/wp-content/uploads/nyu-gan2017.pdf
乳がんは早期であれば命をおびやかす危険性は低く、治療の選択肢も増え、乳房を温存できる可能性も高くなります。定期的な自己検診で自分の体を知り、早期発見、早期治療につなげましょう。ただし、若い世代であっても、血縁者で乳がんに罹った方がいる場合は注意が必要です。不安がある場合はあらかじめ乳腺の専門医に相談してみるとよいでしょう。