子どもを持つことで気が付いたクックパッドが伝える料理の楽しみと大切さ
Tweet日本最大の料理レシピサービス「クックパッド」。家庭の主婦が実際に作っているものが中心となっている掲載レシピは272万品、月間約6千万人の利用者がいるそうです。このクックパッドの初期からのメンバーであり、現在はブランディング・広報・料理教室事業を担当されている小竹貴子さんに佐藤病院の福田がお話を伺いました。
「病院に通えば子どもができると思っていた」初めての壁
司会 まずは小竹さんのお仕事のご様子ややお子さんのことについてお話をお聞かせいただけますか?
小竹 私は、クックパッドでの仕事がすごく好きだったのですが、ユーザーと自分との間に距離を感じていた時期があって、自分がユーザーの気持ちに近づくためには「結婚すると分かるかな? 子どもを持つと分かるかな?」と思うようになりました。それで忙しい仕事の合間をぬって婚活して33歳で結婚しました。でも、子どもがなかなかできなかった。仕事はがんばれば成果がでるのに、子どもはがんばってもできない。病院に行けば子供ができると思っていたけれど、できない。壁にぶつかったのは初めてかもしれないですね。
それで、いろいろな書籍などを読むうちに、がんばってどうにかなるとか、誰かが何とかしてくれるのではなくて、「自分の生活習慣を変えなきゃいけないんだ」と気がついたんです。クックパッドで働きながら、実は自分はひどい食生活をしていましたので。病院もすぱっとやめて、食事や睡眠も変えて生活改善をしたら、運よく子どもを授かりました。
子どもを持ったのは、そもそもユーザーの気持ちを理解したいという思いからでしたが、結局始めてみると自分の会社の理念を自分自身がちゃんと体現する、という気づきがありました。子どもを持つことは、いろいろなことを教えてもらえるとても大事な経験でしたね。
司会 それまではどういった食生活でしたか?
小竹 基本的にジャンクフードは食べませんが、食べたいものを食べていました。「食べた物で自分の体ができている」という考えはあまりなかったですね。野菜も好きですが、バランスを考えたりはしていませんでした。
司会 今はどんな風に食事をとられていらっしゃいますか?
小竹 出産当時は30代ですけど、40代になってくると「元気に仕事行くためにどうするか」 という風に考え始めるので、食について新しい考え方をするようになりました。昔に比べて暴飲暴食はしなくなりましたね。また、最近では食生活を見るスパンを1週間でとるようになりました。飲み会などが続くときもあるので、そういう時も、「まぁ、来週の日曜日までに整えればいいか」という感じで考えています。とるべき栄養素を1週間の中で考えて調整していくということです。
家庭での食育は「子供たちと一緒に料理を作る」こと
司会 お子さんの食事についてはいかがですか?
小竹 子どもは今、7歳と4歳なんですけど。子どもってすごく視覚が大事なので、カラフルにしようと心がけています。色をそろえるとそれなりに栄養素も整うので。それも1週間で整えるという風に考えています。私、料理しかできないんです(笑)。
料理だけはしっかりやろうと決めていて、他の家事などは駄目なのですが、だからこそ料理を子どもの健康維持や子どもとの対話にどう使うかを考えています。一般的に良いお母さんかというと、そうじゃないかもしれませんが、自分の中では「料理を通じてなら、子どもとうまく向き合えるな」という実感があります。
男性も女性も!若い世代の料理をポジティブに楽しむ価値感
司会 若い世代の方についてはどんな風に感じられていますか?
小竹 私は最近、若い女性も積極的に料理しているかなと思っています。インスタグラムを見ていると写真映えするように野菜を盛り付けたりして楽しんでいる。むしろ私たちの世代の方が料理をポジティブに捉えていないじゃないかなと思っているくらいですね。若い子の方がファッションと紐付けたり、音楽と紐付けたり、魅せ方があって私は結構学びを得ています。同僚にもインスタに載せたいから料理をしているという若い子もいます。
福田 それが理由で料理をしているんですか。インスタに載せるために料理をするってなんか新しい! でも作れば食べますものね。今は、若い女性の料理力とその健康度が比例するということも言われています。仕事をしているとつい外食したり、買ってしまったりしますよね、でもそうすると健康度が少し落ちてしまったりする。
小竹 最近はコンビニエンスストアにもバランスを考えたお惣菜があって、それを上手に生活に取り入れているなという若い子もいます。男の子も料理をすごくポジティブにとらえていますね。10代、20の皆さんが新しい視点で料理を捉え、料理というものそのものが変わってきているのかなという気はしています。
「料理は女性のもの」という固定概念が少しずつ若い子世代からとれているのかなという気がしますね。男性も少しずつですが、「料理をするのがかっこいいね」という価値観が広がり始めている感じがします。そういう新しい価値観をできるだけ広げていきたいですね。
若い女性の「痩せ」にある栄養欠損の可能性と妊娠出産
司会 一方で、若い女性の「痩せ」がすごく増えているという話もありますが
小竹 きちんとしたダイエットの知識がないのかなと思います。子どもを産みたいと思っていらっしゃるみたいだし。
福田 そうなんですよね、すごく痩せていて、子どもは3人欲しいけど、40歳前に産めばいいという方とか。その健康状態、食生活、生活習慣で産みたいときに3人産めると思っているし、病院に行けばできると思っている方がいる。
小竹 知らないんですよね。私もそうでしたから。
司会 具体的にはなぜ痩せすぎは妊娠、出産に良くないのでしょうか?
福田 痩せには痩せの理由があります。そもそも摂取カロリーが少ない。摂取カロリーが少ないということは、多分栄養欠損なんですね。さらに、栄養がきちんと摂れていないのに甘いものは食べる、とか。結局、カロリーは摂れていたとしても栄養素としては足りていないので、痩せの不健康な状態ができてしまう。
小竹 痩せている人はいっぱいいてもいいかなと思うのですが、身体の中が健康かどうかが大切。運動で引き締まっていて、細く健康な人はいます。そうでななくて、貧血だったり、過剰に脂肪が少なかったり、生理が不順になっていたりするとあっという間に子宮の年齢が高齢化していきます。そういうことを私も知りませんでしたし、貧血や生理不順のあとで、どういう大きな影響があるか誰も教えてくれないんですよ。どうして学校で教えてくれなかったのか、と思います。
私も子どもがすぐにできなかったのは20代の知識不足からの不摂生があったかもしれません。若さを理由に食べたいものしか食べなかった。「その先に何があるのか」に、気づくきっかけがないといけないですね。
料理は「便利な道具」
司会 小竹さんにとって、料理とはどういったものでしょう?
小竹 すごく便利な道具だと思っています。子どもとのコミュニケーションにも使えるし、自ら健康にもなりますし、仕事にもなる。料理が得意ということでいろいろ得られるものがあります。料理というものは自分の中では武器であると思っています。
司会 小竹さんは昔からお料理がお好きでしたか?
小竹 私、全然しなかったんですよ。母親やおばあちゃんが作っていたので、全然興味もなくて。結婚してからやると褒められるから(笑)大切な人に作ると、「ありがとう」って返ってきて、それで自分も楽しくなって。誰かを幸せにすることが料理ならできるし、戻ってくる自分の幸せもある。自分も変わるし、相手が変わることもできるというのが料理の良いところですね。便利です。
司会 いまクックパッドではどんなことをなさっていますか?
小竹 クックパッドには、「毎日の料理を楽しみにする」という企業理念があるんです。料理はとても楽しいものなのに、いざ毎日となると作業になってしまう。今一度料理というものが持つ価値を多くの方が理解してもらう、といった本質を伝える広報の責任者をしています。また春からは、料理教室事業の責任者も兼務で行っています。
司会 最後に働く女性へのメッセージをお願いします
小竹 改めて健康の大切さに気づき、日々意識して暮らして欲しいです。最近の研究では味覚は変えることができるといわれています。ただ、食習慣はなかなか変えることは難しいのです。
いつか子供が欲しいと思うのであれば、いまから是非準備して欲しい。その時に自分で料理をする力は持っているととても役に立ちます。どう生きていくのにも食べることは外せないことだから、ただしく食事を選ぶ力、そして可能であれば自ら料理ができる力は持っておく方がいいという知識は是非身につけてもらいたいなと思います。
小竹貴子(こたけ たかこ)
1972年、石川県金沢市に生まれ。 関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオにてwebディレクターとして経験を積み、2004年有限会社コイン(現クックパッド株式会社)へ入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010」を受賞。2012年同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰し、ブランディング・広報担当本部長に就任。2016年3月よりクックパッド料理教室事業部本部長兼務。